【プレイ解説】ニコラ・ヨキッチ「ポストマンが現代バスケで身につけたい3つの動き」

第三回は新世代No.1ビックマンの一人Nikola Jokic(ニコラ・ヨキッチ現デンバーナゲッツ)

高速化した現代バスケの中で、スピードも際立った身長も無いなか支配的なプレーを見せるヨキッチ。

これからのビックマンに求められていくスキルを切り取って紹介していきます。

前回の記事はこちら↓

まず近年のNBAはポストアップの効率が年々低下し、チームで使われる割合も減っています。

3Pの重要性が高まり、アウトサイドのドライブやカッティングを増やす為に中のスペースを作るトレンドに対しポストアップは非効率と言われています。

ビックマンもストレッチ4,5として外でシュートを打つ事が求められるようになりました。

またビッグマンがリーグを支配していた2000年代以前とはゾーンDFの解禁などルールも変わり、ポストアップをしてもヘルプがすぐ寄り囲まれやすいです。

なのでただ面を張る形のポストアップは対策されやすいので、スペーシングや戦術的な動きが必要になっています。


※なお今回はアウトサイドのプレーは解説はしません。

外のシュートがない選手でもこれが出来たら!という事を切り取って解説します。


0:22〜からのプレーに注目。

最初はポストから離れスペースを広く取り(他の選手がポストにいる)

ヨキッチの逆サイドの選手がフラッシュ(ボールを貰いに上に上がる動き)

合わせて同じサイドのハイポストにいたが逆サイドにカットしスペースが出来ましたが、このままフラッシュしても逆サイドやトップのDFに囲まれやすいです。(片サイドに固まりすぎですし)

パスをしたトップの選手はスペースを作る為ヨキッチのサイドにカッティングします。

そこにタイミングを合わせてフラッシュ!

GがCにスクリーンをかけて追いかけるかスイッチするかを迫ります。

そのまま追いかければスペースが生まれ、スイッチすればサイズのミスマッチ、どちらにせよアドバンテージが生まれます。

今回DFはそのまま追いかけてきたので、立て直す前にリングにアタックしシュート。

無理やりゴール下まで行ってヘルプに邪魔されないよう、ペイントやや遠目でフローター。


勿論チームによって動き方やルールが違うので、この動きをただコピーするだけでは使えませんが、

・囲まれる前に打てるシュートパターン(ショートフローター、フック、ステップイン…etc.)

・一人で頑張って押し込んでボールを貰うシールやポストダウンだけでなく、タイミングや周りを使ってボールを貰う動き方。

を身につけ、より簡単に攻める工夫が個人レベルでも必要だと思います。



続いて2:00〜からのプレー

ヨキッチといえばビックマンながらパスが凄い!

Cでダントツ、NBA全体でも15位に入る6.9アシストを今年記録しています。

これはなんとChris Paul(クリス・ポール現オクラホマシティサンダー)より上のスタッツ!

ヨキッチはアウトサイドからパスドリブルからパス、はてはP&Rのハンドラーになってのパスまで出来るポイントセンターですが、これら全てを身につけるのはかなり難しいです。

ですがビックマンでもこのパスは簡単で効果的!というプレーがこちら。


P&Rからハイポストでボールを貰い、ジャンプシュートや1on1を仕掛けれなくもないですが、マッチアップはリーグ最高峰のブロッカーRudy Gobert(ルディ・ゴベールユタジャズ)

一旦ドリブルを継続しコーナーの選手へドリブルハンズオフ(手渡しでボールを渡す動き)を狙います。

シュート力のないインサイドは、DFがあえて離してヘルプに行きやすくなるというチームにとってデメリットとなりやすいですが、相手がそれを見越して下がりやすい=リングから離れたところではボールキープしやすいというメリットにもなります。

なのでハンドリングに自信がない選手も狙いやすいプレーです。

ヨキッチはハンドルも上手いですが。

ここでハンズオフした後スクリーンを引っ掛けれたらP&Rの様にダイブ出来るので一気にゴール下で攻めれますが、コーナーのDFもディナイで警戒する場面なので通らない事や逆にダブルチームをされる事もあります。

これはチームメイトの協力も必要ですが、その時有効なプレーが

バックドア(DFの裏をカッティングするプレー)

ハイポストからパスを狙うバックドアは、角度的にも距離的にもトップやウィングより狙いやすく、スペースも生まれやすいです。

またこのパスが出せなくても周りのスペースが空くのでドリブルを継続すればそのまま、キャッチしてても上に返してから再度貰うとポストで1on1がしやすいというメリットも(シュートやフットワークが優れていればそのまま攻める選択肢も)


ボールを貰ったらすぐシュートorポストダウン、ではなく周りを使ったり有利な場作りを自分で、司令塔任せにせず遂行出来る判断力を身につけましょう。

ブロックされないようバックシュートを狙ったカッターもナイス判断。



最後は2:29〜2:41〜のプレー

リバウンドをとってからのボールプッシュと、

速攻からのパス。

1on1のハンドリングがどれだけ苦手でも、これは練習して伸び代が期待出来るプレーです。

これをミスせず行えるインサイドはそれだけで価値が上がります。


普通はリバウンドを奪ったら速攻でもゆっくりでも、Gや一番運ぶのが上手い選手にパスする事が多いです。

それは早く前に運びたいからですし、ドリブルが苦手な選手が運ぶと前から当たられてターンオーバーが起きやすいというリスクからも妥当です。

ですが前に飛ばすアウトレットパスでない限り、リバウンドしてから味方が貰いにくるまでキープする時間分相手が戻る時間が生まれるのと、貰いに動く分単純に前に走る人数が一人減ります。

(そこを両立するために強いチームは、速攻をただ走るのではなく戦術的に動き方走り方を練習している所が多い印象です。)


またアウトレットパスは狙えるならガンガン狙いましょう。どのチームでも期待値を高めれる最高のプレーの一つだと思います。

ではリバウンドをとったインサイドがボール運びが出来たら?

リバウンド争いをしていた選手を置き去りにしてアウトナンバーが生まれたり

オフェンス4人に対しセーフティで戻ったのにディフェンス3人の数的有利。


味方は「こいつはボール運べるから先に前に走ろう!」と思い切りが良くなると速攻のスタートが早くなり、自分のマークマンは戻っていても他のマークマンが1人でも遅れると…

画面手前のコーナーの選手が戻り出しが遅く、5vs4の数的有利が出来た。


一番早く戻った二人がそれぞれ左右の選手をピックするも…

27番をマークする選手が足りずフリーに。


ドリブルプッシュとパスが出せると例え自分にスピードやオフェンス力が無くとも、チームの速攻を増やす=得点力を増やす事が出来ます。


補足ですがボールプッシュはDFを打ち抜いて運ぶのが主ではありません。もうすでに戻ったDFが目の前にいるのなら、余程ハンドリングに自信がなければそれは速攻を仕掛けず繋いだ方が確実です。

あなたがリバウンドを獲る力があり、ハンドリングとスピードを兼ね備えた選手=Russell Westbrook(ラッセル・ウエストブルック現ヒューストンロケッツ)やGiannis Antetokounmpo(ヤニス・アデトクンボ現ミルウォーキーバックス)のような選手であれば、コートの端から端まで一人で運んで決めるcoast to coast(コーストゥコース)を狙ってみてください。

あくまで前にスペースがあり、自分が前にドリブルした方がチャンスがあるという時に仕掛ける事で、毎回リバウンドからドリブルするのはオススメしません。

そしてインサイドが変わらず求められることは「まっすぐリングに向かって走る」事。

ボールプッシュからウィングにパス→そのままゴール下まで走りレイアップか、シールすればそのままポストアップで勝負出来ます。

走れるCはそれだけで武器です。



以上3点。

高速化した現代バスケ、ポゼッション(攻撃回数)が増やそうとする今のバスケでリバウンドとったら終わり、面張るまで待っててという鈍足なセンターはなかなか活躍できなくなりました。

シュートやアウトサイドのプレー、DFでもスイッチしたGにそのまま守れる機動力も求められ、インサイドでも多少のサイズよりスキルを求められています。

ではシュートやドリブルスキルがないと活躍できないのか?そんなことはありません。

どの時代でも変わらず1番ポストマンに求められることは体を張ること、ハードワークとリバウンドです。

その頑張り方を少し変えて増やす。

・足を止めての面取り争いから、一瞬の駆け引きも身につける

・インサイドでゴリゴリ押し込みシュートだけでなく、ボールキープが出来る中継役に

・リバウンドはDFの終わりではなくOFの始まり、自分が速攻をクリエイトする。


外のポジションは出来ないけど、痩せてるのにインサイドしかやらされなくて辛いという選手(昔の自分です笑)

昔ながらのバスケしかやったことがなく、現代バスケに適応したい選手など。

シュートやドリブルのボールスキル以外で身につけたい事、活躍できる道はいくらでもあります!

まずは試しにこれらの動きを練習して見てください。


スキルポイントまとめ

①ポストに居座り続けず、あえて離れたりいきなり動くポストのオフボールムーブを身につけよう!

②ポストマンはリングに攻めるだけでなく、周りを動かす司令塔にもなれる!

③ポストアップする為に、自分がハンドラーになる道もある!